妊婦さんの身体は千差万別。本当はみなさんお一人お一人に合ったアドバイスを細かくできればいいのですが、遠くにお住まいの妊婦さんやママに当院に来ていただくことはできません。
そこで、このページでは私の今までの経験をもとに、どんな妊婦さんやママにも当てはまるアドバイスができればと思っています。ママの不安が少しでも取り除かれ、ママと赤ちゃんの大切な時間がすこやかなものになるようにお祈りしています。
お腹の中で赤ちゃんは出産の時期を楽しみに待っています。お母さんが無理な生活をすると、お腹の張り、痛み、出血などの症状がはじまり、赤ちゃんは辛い状況になってしまいます。また、お産に対して体や心の準備ができていないと陣痛が来なかったり、破水をしたり陣痛が長引いたりなどの症状も起こします。
適切な時期に相応した、運動、食事、睡眠、など気を配ることが妊娠を無事に継続させ、出産を安産にもっていく秘訣になります。ただ、そうはいっても、妊娠中や授乳中は普段の生活に比べると、いろいろ制約されていることも多く、なんとなくナーバスになりがち。でも、つぼをおさえてなるべく楽しく食べて快適な生活ができたらいいですね。
妊娠中から授乳中に一番注意しなければけないのは、「体を冷やさないこと」。健診中も毎回のように「冬は温める」「夏は冷やさない」と言われます。体の外からはもちろん、なかからもポカポカになるように頑張りましょう。
(1)温かいお料理を食べる
夏場などは口当たりがよい冷たい食べ物が食べたくなりますが、なるべく温かい料理を食べるようにしましょう。(汗を沢山かいてしまうくらいのものは、その後冷えてしまい、かえって逆効果になります)また、料理の食材には、ショウガや長ネギ、ニラ、にんにく、味噌など、体を温める効力があるものを選びます。(胃腸に刺激のあるものも含まれていますので、食べ過ぎに注意)
(2)体を冷やすものはなるべく食べない
・上白糖
・暑い地方で取れる食材(スパイスなどを含みます。)
・夏の野菜、果物(トマトは加熱して食べるとOK)
・炭酸飲料(糖分も多いので)
・普通の飲み物もなるべく常温、または温めで飲む
基本的に、今まで夏に食べていたもの(サラダや麦茶など)は体を冷やす効果大!気をつけましょう。麦茶などは温めても体を冷やします。
あったかレシピ
<砂肝焼酎スープ>
砂肝を白い筋もついたままたっぷりの焼酎の中にいれ、生姜、ネギと共に焼酎が半分になるくらいまでコトコト煮ます。できあがったスープに天然塩をひとつまみ入れて飲むと体はポッカポカ。
焼酎+生姜+ねぎの組み合せは、体を温める効果抜群。いつものお料理で「酒」を使う代わりに「焼酎」にしてもOK。旨味成分は少し劣りますが、体は暖まりますよ。
★自然塩をつかう
自然塩妊娠中毒症などを避けるため使用が制限される塩。でも、妊娠初期から薄味に慣れるとともに、自然塩に切り替えると、塩に含まれるミネラル分が体内の電解質のバランスを良くして、腎臓への負担も軽くしてくれます。お料理の味もやさしくなりますよ。同じように、お味噌やお醤油なども、なるべく天然素材由来のものを使いたいですね。
★牛乳からのカルシウムは?
もともと日本人は、牛乳を飲む文化がありませんでした。ごく最近になって牛乳を飲むようになり「妊娠中はカルシウム=牛乳」という図式ができたけれど、先祖伝来、おなかが消化吸収することに慣れている魚がベター。魚の全身をくまなく食べられる小魚からカルシウムをとるのがいいでしょう。
★ 甘みは黒糖で
上白糖は体を冷やすので、なるべく控えることをお薦めします。お料理に甘みをプラスしたい場合は、ミネラルもたっぷり含まれた黒糖を使用するようにしましょう。
★鉄分
鉄分もうひとつ、妊娠前期からお医者さんが口をすっぱくしていうのが鉄分補給について。以前はひじきやレバーなどを食べるように言われますが、今は甲状腺やビタミンAの過剰症など問題になり、毎日食べるのは考え物です。また他にも意外と鉄分の含有量が多いのが海苔です。金針菜(ゆりのつぼみ)も鉄分が多く、煮物や炒め物にしても美味しくいただけます。
栄養いっぱいレシピ
<妊娠応援大根サラダ>
材料:大根の千切り、生姜のおろしたもの、かつお節、じゃこ、海苔
器に大根の千切りを小皿に盛り、少量の醤油とオリーブオイルかごま油をかけます。そこにかつお節、じゃこ、生姜のおろしたもの、そしてたっぷりの海苔をかけ、よく混ぜて召し上がれ!海苔がドレッシング代わりになって調味料類が少なくても美味しい〜!最初にかける醤油類は少しでOKなので、塩分も控えられます。
授乳中は、質の良い母乳を保つことがお母さんにとっても赤ちゃんにとっても最善です。
特に現在、日常の食事の中にあふれているもので危ないのは、「脂肪」です。脂肪を取ると、母乳中の脂肪球の大きさが34倍くらいにまで膨れるとのこと。乳腺が詰まりやすくなると同時に、おっぱいの味も悪くなります。
赤ちゃんを産んですぐの産褥期は、お母さんの運動量も少なくなって、摂取したカロリーをスムーズに消化できない上に、乳房機能も安定していないために脂肪の取り過ぎは特に避けた方がよいでしょう。おっぱいの機能にもとても個人差があるので、赤ちゃんにおっぱいをあげることに慣れて来たら、以下に挙げた食品も少量ずつとってみて。自分の体の調子、また、おっぱいを飲む赤ちゃんの顔色をうかがいながら「これは大丈夫、これはダメ」と判断していけたら良いですね。
手のひらに入る大きさの魚類
じゃこ、しらす、ししゃも、ワカサギ など
あっさり魚類
たい、カレイ、ひらめ、さわら、さより、めざし、すずき、あさり、かき、しじみ、あわび、
えび、たこ、いか など
油の少ない肉類
鶏肉のささ身、豚肉のヒレ、など
緑黄色野菜、淡色野菜、海藻、きのこ、豆類、イモ類
ご飯の後に必ず甘い物を食べていた人でも、しっかり甘さの加わったおかずを食べれば「デザート欲」もいくらか軽減できます。砂糖が使えない煮物などには、タマネギを少しの油でよ〜く炒めて甘みを引き出して加えるといいですね。
有機農法でできたタマネギや人参などは、そのまま茹でたり蒸し焼きにするだけでも結構甘さが引き出されます。この機会に砂糖やお菓子を買うお金をちょっと別の方向に使って、素材自体が美味しい物を買うようにすると、赤ちゃんの離乳食が始まったときも便利で安心です。
「でもやっぱり甘いものが食べたい!」時は、リンゴ、サクランボ、サツマイモ、カボチャなどを選んでください。特にサツマイモは、低温でじっくり時間をかけて焼くと、あまみが倍増します。
また、大豆製品、お麩などの小麦グルテン等も多いに利用したいものです。特に生麩はもちもちしていて、きな粉をかければちょっとした和風スイーツになります。
他にも、マクロビオティックや薬膳食品、有機野菜、無添加食材等を扱うショップでは、砂糖不使用のジャムやクッキー、お惣菜などがあるので、それらを利用するのもいいかもしれません。
そんなときは、お豆腐をフル活用。しっかり水を切った木綿豆腐をステーキ風に焼いたり、ちょっと分厚く切ってじっくり煮るとボリュームもあって大満足。満腹感もバッチリです。
昔は栄養事情がわるかったために、お母さんは赤ちゃんの分と「二人分食べなきゃダメ」といわれ、どんどん食べさせられていました。でも、今では食べ過ぎは栄養過多になり、乳質を悪くしてしまう原因にもなるので注意が必要です。特に食べ過ぎに注意したい食材は以下のような物です。
脂の強い青身魚
さば、ぶり、さんま、にしん、こい、うなぎ、まぐろ、あじ、かつお、鮭 など
脂の多い肉
さしの入った牛肉などはかなりの脂が含まれています。出産後はしばらくの間、脂身の部分は控えて摂ってください。
乳脂肪を含む食品
成分無調整の牛乳、チーズ、バター等も要注意
油を多く含む料理
油そのものが大問題なので、天ぷら、フライなどは要注意。
餅、菓子類
「おっぱいの出がよくなるから!」と薦められる餅類も、酵素の働きが大きいために、おっぱいがマズくなりがち。避けましょう。 また、菓子類に多く含まれる糖分は、おっぱいがドロドロに。しぼると最初は薄い液が出て、しばらくするとドロドロのものがでてくる「片栗粉を水でといてしばらくたったもの」状になってしまいます。
体を冷やす白砂糖の他にも、自然の糖であるメイプルシロップや黒砂糖でもおっぱいがドロドロになる傾向があるので、要注意。果物の糖分(果糖)も取り過ぎに注意です。
アクの強い野菜
特に筍は、普通の人が食べるときでも何度もアク抜きしなければいけない程。アクのエグ味は乳質もマズくするので控えましょう。
もしかしたら、油物の食べ過ぎかも!と思ったら、赤ちゃんの髪の毛をチェック! 赤ちゃんのふわふわの髪の毛が、更にふわふわふわっと立って、逆立ってしまうことがあります。これは脂分の取り過ぎサインです。あかちゃんの髪が逆立ってきたら「ちょっと油物食べ過ぎなのね」と注意してください。
寒い季節に体を温めるなら「頭寒足熱」といいますが、妊婦さんは季節に関係なく下半身を温かくすることをお薦めします。
特に油断してしまいがちなのが、寒暖の差が激しい季節の変わり目です。日中温かいからと薄着でいると、夜にグッと気温が下がりすっかり体が冷えてしまうので要注意です。また、気温の高い夏でも、エアコンの風が直接当たらないように必ず羽織るものを準備しましょう。夏の冷えは思った以上に頑固なので、ソックスは必需品。指先がムレる場合は、レッグウォーマーをかかとまで下げてはくように工夫したり、ソックスのつま先を切って使用してみてください。スカートをはくときは、スパッツの着用は忘れずに!
寒い冬は、手足、首筋、太もも、肩甲骨などを温めるのがポイント。ストールや膝掛けなどでこれらの部位を温めるとすぐに体がポカポカになります。座っている作業が長い場合、小さな湯たんぽなどを股の間に挟んでおくと温まりやすくなります。
最近はくるぶしまでの短いソックスがありますが、妊娠中は丈の長い物を選びましょう。
内くるぶしから指の幅4本分ほど上のところにある「三陰交」というツボを温めるだけでも冷えが解消されます。このツボは生理痛や生理不順を軽くする効果もあるので、覚えておくと便利です。
腹帯は妊娠5ヶ月の戌の日につけるといわれていますが、気温が下がって来たら、ちょっと早めでも使用してみましょう。お腹を支えて腰痛を緩和する役割もありますが、冷えの防止におおいに役立ちます。お腹よりも背中をカバーできるものの方が体を温めるので、背中側がたっぷりした腹帯をチョイスするといいでしょう。さらしの腹帯の場合は、巻き方で調節できるので便利ですよ。