12年前のこと
私は笑う事って、単に口角を上げることだと思っていた。
心から笑ったことなどもう50年無かったから
50年前の私の座右の銘、『泣くこと厳禁』
泣くことは許されなかった。泣けば家族や従業員から嘲りの、見下した笑いが起こること。それは心に刺さることだったから
悲しいこと、辛いことがあっても、それは何も感じない様に心を閉ざしていた、いつも。
家は安らぎの場所ではなく、自分の部屋さえも、土足で入りこまれてしまう場所だった。日記も無断で読まれて、自分の知らないところで拡散される。
そこでは笑顔である必要は無かった。
当然のことに自立の道を選んだ。そうしなければ活きられなかったから。
それからずっとこの道を歩いてきた。
そう、12年前のあの時に言われた言葉、「笑ってごらん」。
そして口角を上げた私に対して、「それは笑いじゃない」
「心からの笑いじゃないでしょ?
目が笑ってないよ……」
それから笑って良いことが分かった。なにも制約なく、嘲りも、噂話も感じる事無く、笑顔ができるようになってきた。
そう教えてくれた人は、もう肉体を持っていない。ニライカナイに旅立った。
今も、いつも思い出す。
色々沢山のことがあったけれど、やはり出会えたことは感謝でしかない。